竹内宏介の訃報に思う

 竹内宏介が5月3日に亡くなった。49日も過ぎ、忌中も明けた。もう書いていいだろう。

 わたしは竹内宏介という人物に関して、ライターとしても解説者としても好感を持てない。

 特に、てにおはや、主語と述語を一致させるという最低限の約束事さえ守れていない稚拙な文章、「本当はこんなこんな秘密を知っているけど(もっとおもしろい話もあるけど)、これ以上は書く気がない」などと平気で記す無神経さと幼稚さには、何度も不快な思いをさせられた。

 もちろん無視できない多大な功績もあるが、それは彼のファンや後輩が語ればよいことだ。実際この2ヶ月、追悼という形を取ったそんな文章をずいぶん見た。屋上に屋を架す気はない。そうまでして彼について語るだけの、思い入れがないのだ。

 ただ、気にかかるのは彼のビデオ・コレクションである。

家庭用VTRの購入も信じられないくらい早かった。昭和51年にSONYがテレビと一体化した初めてのVTRを出したときに当時、50万円近くしたこのVTR機を迷うことなく購入した。 (中略) 21歳で独立してからいままで購入したビデオ・デッキの数はとても思い出せないくらいだ。いまでも自宅には7台のテレビと12台の「ビデオデッキがフル活動している。しかも、自宅に3000本近くはあると思われるビデオテープも、ほとんどプロレス関係か映画関係である。

竹内宏介『テレビ・プロレス見聞45年史 金曜日夜8時伝説』(日本スポーツ出版、1998)

 その後10年を経て3000本のビデオが、いったい何本に増えたのかは知らない。しかしこの貴重な映像資産が散逸や紛失することがないよう、よい形で保存・活用されるよう願いたい。