泰然自若のブッチャーの影に二つの闘い ――週刊プロレス408号(1990年11月21日)

 この号の表紙は、スーツ姿に葉巻を悠然と加えたブッチャーであった。


 しかし、表紙を開くと長州力が吠える!
 ターザン山本編集長を相手に、あの名言を吐くのである。

長州 そうだ。いくらオレが狙いを定めてを定めて、Uを撃っても弾丸(たま)が届かないんだ。なぜだかわかるか? Uはそのたびにピュッと逃げるんだ。銃を構えても無駄。ヤツらは決して、同じ土俵に降りてこないのだ。
山本 (中略)長州さんは、なぜUを撃つ必要があったのですか?
長州 山本、その意味はおまえもよく知っているはずだ。Uはプロレスの中にあるか、外にあるのか、どっちだ?
山本 中です。
長州 中だよな。でも、ヤツらは外にいるポーズを取っている。それは許されるべき態度ではないぞ。
山本 彼らはプロレスを“踏み台”にして、のし上がってた。この一点にUの問題点がある。
長州 オイ、山本、その問題点を作ったのはおまえだぞ。
山本 え?
長州 なぜ、オレの撃った弾丸(たま)がUに届かないのか、ある時、その理由に気が付いた。お前がUの前にバリアーを築いていたからだ。届かないはずだよな。
山本 ボクがバリアーを?
長州 そう、この意味は大きいぞ。山本、Uはお前なんだよ。あれはお前が作ったんだよ。
山本 ……。
長州 原子爆弾核兵器)の原理を考え出した科学者と同じだ。Uの原理を考え、そのUを宣伝したのは山本、お前なんだ。

 もう一人吠えた男がいた。

 大仁田厚である。

「百歩譲ってFMWが表紙じゃねぇのは認めるとして、どうしてブッチャーが表紙なんだよ!」

この週のFMWは一周年記念大会の記事が載る号だった。しかし週プロは先週号に速報を載せたため、試合以外の逸話を中心に記事を書き、試合内容は写真とキャプションで済ませてしまった。

 大仁田は怒り、それ以降、表紙を作ったターザンとの間には溝が出来たという。*1

*1:小島和宏『僕の週プロ青春期』(白夜書房、2008)P.83-P.84から