“名勝負数え歌”18番目の調べ PART1

 藤波辰巳(辰爾)vs長州力“名勝負数え歌”はわたしの数え方が間違っていないのなら、何度かの中断をはさみつつも27回行われている。1978年から続く長寿シリーズだ。

 この中でベストマッチとしてよく名前が挙がるのはまず、1983年4月3日の試合、次いで1988年6月24日の試合である。

1983年4月3日 蔵前国技館
WWF認定インターナショナル・ヘビー級選手権試合 60分1本勝負
長州力 (16分39秒 体固め) 藤波辰巳×

1988年6月24日 大阪府立体育会館
IWGPヘビー級王座決定戦 60分1本勝負
藤波辰巳 (18分46秒 首固め) 長州力×

 が、わたしに取ってのベスト1はどちらでもない。1987年10月5日の試合こそが、わたしにとっての“名勝負数え歌”ベスト1である。

1987年10月5日 後楽園ホール
60分1本勝負
藤波辰巳 (22分10秒 両者フェンスアウト) 長州力
藤波辰巳 (24分51秒 両者フェンスアウト) 長州力
藤波辰巳 (35分5秒 無効試合長州力

 この試合にはいくつかの不幸がある。
 ひとつには猪木とマサ斉藤による巌流島決戦と同じ日に放送されたことだ。
 もうひとつは、この試合がコイントスマッチというギミックを用いられたということである。

 藤波辰巳前田日明か。
 ミスター高橋がリング上でコイントスを行い、その結果で長州の対戦相手が決定するのだ。

 長州の約8ヶ月ぶりのテレビ登場、その対戦相手を投票で募った結果、1位は藤波(1170票)、2位は前田(1157票)であった。
 コインが表なら藤波、裏なら前田。

 コインが高橋の手元から跳ね上がり、高橋の手に戻る。
 そのコインを一別してから、高橋が指さしたのは藤波であった。

 間髪入れずに藤波に突進する長州と、それを背に冷めた風情でリングを去る前田。

 投票結果が1位は藤波、2位は前田とは先に書いた。
 しかし、わたしの知る限りでは、ほとんどの人が長州と前田の対戦を望んでいた。未だに不快感を持って語るファンもいるくらいである*1

 時代は長州vs前田を求めていた。しかし、新日はそれをファンに提供しようとしなかった。そのファンの失望の中で二人は試合を行うことになる。
 
(続く)



参考文献
長州力名勝負100』週刊ゴング3月12日増刊(日本スポーツ出版、1997)
ミスター高橋新日本プロレス黄金時代「伝説の40番」完全解明』別冊宝島1557号(宝島社、2008)
『永久保存版 デビュー40周年記念 藤波辰巳☆炎の飛龍40年』(ベースボールマガジン、2011)

参考サイト
ドラゴン藤波探検隊

*1:投票した層が違うのか、あるいは発表された結果が操作されたものなのか。そのどちらかは分からない。