あの発言の原型に迫る――「こんな試合ばかりしていたら……」

 以前、古舘発言「猪木は長州のサソリ固めを〜」について検証した。

 もうひとつ、古舘アナがことあるごとに言っていたフレーズがある。

「こんな試合ばかりしていたら、十年持つ選手生命がx年で終わってしまうかもしれない」

 x年というのは、そのときによって、5年だったり3年だったり1年だったりするからだ。

 この発言が行われたのは、ストロング小林戦が行われた1974年3月19日の蔵前国技館でのリング上である(古舘は「ジョニー・パワーズ戦のとき」と言ったこともある)。

 このときのインタビューを正確に文章に起こしてみよう。

三浦「このあとですね、挑戦者が現れましたときには、どうなさいますか?」
猪木「チャンピオンもね、1年闘って負けることもあるし、それは宿命なんですね。わたしもほんとうならば、10年持つ選手生活が1年で終わってしまうかもしれない。しかし、それがね、ファンに対しての我々の義務だと思うんで。だからもうほんとに、誰が挑戦しても――そりゃ、もうわたしが勝てない相手がいるかもしれない、中には。しかしわたしはいつ何時でも受けて立つ。それで負けても悔いない。そういうつもりです」

 いかがだろうか。
 古舘発言とは結構なニュアンス違いが感じられないだろうか。

 猪木が言ってもいない言葉――すなわち古舘アナによってアレンジされた言葉――をもとに、猪木を猪木を批判する人がいるが、それは全く的外れなわけである。

 そして、このときに「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」の原型と思われる発言がなされたことにも注目すべきである。